見た目が似ていても、用途・寸法・積載荷重・設置場所によって関係する法規が変わります
工場、倉庫、物流施設、店舗、病院などでは、人や荷物を上下階へ運ぶために、さまざまな昇降設備が使われています。
一見すると同じような設備に見えても、法規上は「エレベーター」「小荷物専用昇降機」「簡易リフト」などに分かれる場合があります。
また、関係する法規も、主に建築基準法と労働安全衛生法に分かれます。
建物に設置されるエレベーターや小荷物専用昇降機は、主に建築基準法の規定が関係します。
一方、工場や作業場などで荷物を上下搬送する簡易リフトは、労働安全衛生法の規制を受ける場合があります。
今回は、エレベーター・リフトの法規区分について、建築基準法と労働安全衛生法の違い、分類の考え方、積載荷重による違いについてご紹介します。

 

エレベーターに関係する主な法規
エレベーターやリフトを計画する際には、主に次のような法規が関係します。
法規        主な対象
建築基準法   :建物に設置されるエレベーター、小荷物専用昇降機など
労働安全衛生法 :工場・作業場などで使われるエレベーター、簡易リフト、作業用の昇降設備など
建築基準法は、建物に設置される設備としての安全性や構造、確認申請、検査などに関係します。
国土交通省も、建築物に設置されるエレベーター等について、設計・製造・設置段階の構造方法等の基準や、使用・維持管理段階の検査基準が建築基準法令で定められていると説明しています。
一方、労働安全衛生法は、作業場で労働者が安全に作業するための設備として、エレベーターや簡易リフトなどの構造、設置、使用に関係する場合があります。
つまり、同じように荷物を上下に運ぶ設備であっても、建物側の法規で見るのか、作業設備としての法規で見るのかによって、確認すべき内容が変わることがあります。


建築基準法で扱われる昇降設備
建築基準法では、建物に設置される昇降設備として、エレベーターや小荷物専用昇降機などが扱われます。
代表的なものは次の通りです。

種類

主な用途

人の乗降

乗用エレベーター

人の移動

人が乗る

人荷共用エレベーター

人と荷物の移動

人が乗る

荷物用エレベーター

荷物の搬送

原則として荷物用

小荷物専用昇降機

小さな荷物の搬送

人は乗れない

建築基準法上、人や物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が1㎡を超えるもの、または天井高さが1.2mを超えるものは、エレベーターとして扱われます。大阪市も同様に、かごの水平投影面積が1㎡を超える、または天井高さが1.2mを超える昇降機について、エレベーターとして案内しています。
一方、小荷物専用昇降機は、荷物を運搬するための昇降機のうち、かごの水平投影面積が1㎡以下で、かつ、天井高さが1.2m以下のものとされています。
そのため、建築基準法側では、人や荷物を運ぶ建物設備かどうか、かご面積と高さがどの範囲に入るかが重要な判断要素になります。

 

労働安全衛生法で扱われる昇降設備
労働安全衛生法では、工場や作業場などで使用される設備として、エレベーターや簡易リフトなどが関係する場合があります。
特に、工場や倉庫などで「荷物を上げ下げしたい」という場合、それが建築基準法上のエレベーターなのか、労働安全衛生法上の簡易リフトなのかを確認することが大切です。
労働安全衛生法上の簡易リフトは、人が乗るための設備ではなく、荷物を上下に搬送するための設備です。
国土交通省の資料では、労働安全衛生法側の分類として、かごの面積が1㎡を超え、かつ高さが1.2mを超えるものはエレベーター、かごの面積が1㎡以下または高さが1.2m以下のものは簡易リフトとして整理されています。
つまり、労働安全衛生法側では、建築基準法とは異なり、かごの面積が1㎡以下、または高さが1.2m以下であることが簡易リフトの判断に関係します。

 

かご寸法による分類の違い
法規区分で特に分かりにくいのが、かご寸法による分類です。
建築基準法と労働安全衛生法では、1㎡と1.2mという基準は同じように出てきますが、分類の考え方が異なります。

かご条件

建築基準法上の考え方

労働安全衛生法上の考え方

かご面積1㎡以下 かつ 高さ1.2m以下

小荷物専用昇降機

簡易リフト

かご面積1㎡超 または 高さ1.2m超

エレベーター

条件によりエレベーターまたは簡易リフト

かご面積1㎡超 かつ 高さ1.2m超

エレベーター

エレベーター

国土交通省の資料でも、建築基準法では「かご面積1㎡超または高さ1.2m超」はエレベーター、「かご面積1㎡以下かつ高さ1.2m以下」は小荷物専用昇降機として整理されています。一方、労働安全衛生法では「かご面積1㎡超かつ高さ1.2m超」はエレベーター、「かご面積1㎡以下または高さ1.2m以下」は簡易リフトとして整理されています。
ここで重要なのは、同じ設備でも、建築基準法と労働安全衛生法で分類の見方が異なる場合があるという点です。
そのため、工場や倉庫に設置する昇降設備では、建築基準法側と労働安全衛生法側の両方の確認が必要になる場合があります。

 

積載荷重による違い
積載荷重も、法規区分や手続きに関係します。
積載荷重とは、かごや搬器に載せることができる最大の重さのことです。
建築基準法では、エレベーターのかごの積載荷重は、当該エレベーターの実況に応じて定めることとされています。
そのうえで、乗用エレベーター以外のエレベーターのかごについては、床面積1㎡につき2,500N、自動車運搬用エレベーターでは1,500Nとして計算する考え方が示されています。
一方、労働安全衛生法側では、積載荷重によって設置報告や届出、検査などの手続きが関係する場合があります。
例えば、労働局の手続き案内では、積載荷重0.25t以上1t未満のエレベーターを設置する場合や、積載荷重0.25t以上の簡易リフトを設置する場合に、所轄の労働基準監督署へ手続きが必要になることが案内されています。
また、労働安全衛生法施行令では、積載荷重1t以上のエレベーターは、法第37条第1項の政令で定める機械等、いわゆる特定機械等として扱われます。
整理すると、次のようになります。

法規

積載荷重の考え方

建築基準法

建物に設置される昇降設備として、かご床面積や使用状況に応じて積載荷重を確認します。

労働安全衛生法

作業場で使う設備として、0.25t以上、1t以上などの積載荷重によって、報告・届出・検査などの手続きが関係する場合があります。

つまり、建築基準法ではかごの床面積や建物設備としての安全性が重要になり、労働安全衛生法では作業設備としての積載荷重や安全管理が重要になります。

 

簡易リフトに関する取扱いの変更
簡易リフトについては、近年、建築基準法側の取扱いが整理されています。
令和7年11月1日以降、労働安全衛生法で規制を受ける簡易リフトについては、建築基準法におけるエレベーターまたは小荷物専用昇降機に係る規制の対象外とされました。
国土交通省は、労働安全衛生法で規制を受けている事業場に設置される簡易リフトについて、建築基準法におけるエレベーター・小荷物専用昇降機に係る規制の対象外とする内容を案内しています。
そのため、簡易リフトについては、以前の情報と現在の取扱いが異なる場合があります。
実際に簡易リフトを計画する場合は、最新の法令、行政庁、労働基準監督署、確認検査機関などに確認することが大切です。

 

法規区分を間違えるとどうなるのか
エレベーターやリフトの法規区分を誤ると、計画後に仕様変更や手続きの見直しが必要になる場合があります。
例えば、簡易リフトとして考えていた設備が、実際にはエレベーターとして扱われる場合、必要な構造、確認申請、検査、維持管理の内容が変わる可能性があります。
また、荷物用として計画していた設備を、実際には作業者も一緒に乗る運用で使う場合、人荷共用エレベーターとしての検討が必要になる場合があります。
このような認識のずれがあると、次のような問題につながることがあります。
• 設計の見直しが必要になる
• 昇降路寸法や建物条件が合わなくなる
• 確認申請や届出の手続きが変わる
• 工程に影響が出る
• 安全上の問題が生じる
• 将来の保守や検査で問題になる
そのため、計画初期の段階で、用途、寸法、人の乗降の有無、設置場所、積載荷重を整理し、法規区分を確認しておくことが大切です。

 

よくある質問
Q. エレベーターとリフトは何が違いますか?
A. 一般的には、どちらも上下に搬送する設備として使われる言葉ですが、法規上は用途、構造、かご寸法、人が乗るかどうか、設置場所などによって区分が変わります。見た目だけで判断せず、計画内容に応じて確認することが大切です。

 

Q. 建築基準法と労働安全衛生法は何で振り分けられますか?
A. 積載荷重だけで決まるものではありません。設置場所、用途、人が乗るかどうか、かごの床面積、かごの高さ、積載荷重などを総合的に確認します。建物に設置される昇降設備は建築基準法、工場や作業場で使う簡易リフトなどは労働安全衛生法が関係する場合があります。

 

Q. 積載荷重が大きいと労働安全衛生法の対象になりますか?
A. 積載荷重は重要な判断要素のひとつです。労働安全衛生法側では、0.25t以上や1t以上といった基準によって、報告・届出・検査などの手続きが関係する場合があります。ただし、積載荷重だけで法規区分が決まるわけではありません。

 

Q. 荷物用エレベーターと簡易リフトは何が違いますか?
A. 荷物用エレベーターは、建物に設置される昇降設備として建築基準法が関係します。一方、簡易リフトは、工場や作業場などで荷物を上下搬送する設備として、労働安全衛生法の規制を受ける場合があります。用途、かご寸法、設置場所によって判断が変わります。

 

Q. 小荷物専用昇降機とは何ですか?
A. 書類、食品、薬品、小物など、小さな荷物を上下階へ運ぶための設備です。人が乗ることはできません。建築基準法上は、かごの水平投影面積が1㎡以下で、かつ、天井高さが1.2m以下のものとされています。

 

Q. 荷物用エレベーターに人は乗れますか?
A. 荷物用エレベーターは、荷物搬送を目的とした設備です。荷扱い者以外の作業者が乗る運用を想定する場合は、人荷共用エレベーターとして検討する必要があります。

 

Q. 法規区分は誰に確認すればよいですか?
A. 建物条件、用途、かご寸法、搬送物、人が乗るかどうか、積載荷重によって判断が変わるため、設計事務所、確認検査機関、特定行政庁、労働基準監督署、エレベーター会社などに早めに確認することが大切です。

 

まとめ
エレベーターやリフトは、見た目が似ていても、用途、かご寸法、人が乗るかどうか、設置場所、積載荷重によって、関係する法規が変わります。
建物に設置されるエレベーターや小荷物専用昇降機は、主に建築基準法が関係します。
一方、工場や作業場などで使用される簡易リフトは、労働安全衛生法の規制を受ける場合があります。
建築基準法では、かご面積1㎡や高さ1.2mを基準に、エレベーターや小荷物専用昇降機としての分類が関係します。
労働安全衛生法では、作業場で使用する設備として、簡易リフトやエレベーターの扱い、積載荷重による手続きが関係する場合があります。
つまり、法規区分は「何kg載せられるか」だけで決まるものではなく、どこに設置し、何を運び、人が乗るのか、かごの大きさはどれくらいかを合わせて判断することが大切です。
計画段階で法規区分を確認しておくことで、後から仕様変更や手続きの見直しが発生するリスクを抑えやすくなります。
三洋輸送機工業では、荷物用・人荷共用エレベーターを中心に、搬送物の条件、建物条件、使用方法を確認しながら、現場に合った仕様をご提案しています。
「荷物用エレベーターなのか、人荷共用エレベーターなのか」「簡易リフトでよいのか、エレベーターとして検討すべきなのか」など、計画初期の段階でもお気軽にご相談ください。


執筆者紹介
三洋輸送機工業株式会社 設計担当
荷物用・人荷共用エレベーターを中心に、工場、倉庫、物流施設、既存建物など、さまざまな現場のご相談に対応しています。
搬送物の条件だけでなく、建物条件、使用方法、法規区分、保守性まで確認し、安全で使いやすい設備をご提案することを大切にしています。