荷物用エレベーターを計画する際には、積載荷重やかご寸法だけでなく、扉仕様も重要な検討ポイントになります。
荷物用エレベーターでは、台車、パレット、部品、製品、原材料、重量物など、さまざまな荷物を搬送します。
そのため、扉の開き方や出入口の寸法が現場の使い方に合っていないと、荷物の出し入れがしにくくなったり、作業効率が下がったりすることがあります。
また、扉仕様は使いやすさだけでなく、建物の計画にも関係します。
例えば、上開き扉にするとエレベーター頂部に必要なスペースが大きくなり、建物の高さ条件によっては納まりにくい場合があります。
一方で、平面上のスペースに余裕が少ない場合は、片開き扉や中央開き扉よりも、上開き扉の方が納まりやすい場合もあります。
このように、荷物用エレベーターの扉仕様は「どの扉が一番良い」と一律に決めるものではありません。
搬送物、建物高さ、昇降路まわりのスペース、乗場の動線などを確認しながら、現場ごとに適した仕様を検討することが大切です。
今回は、荷物用エレベーターの代表的な扉仕様の違いや、計画時に確認したいポイントについてご紹介します。

 

荷物用エレベーターで扉仕様が重要な理由
荷物用エレベーターでは、扉仕様によって使いやすさが大きく変わります。
乗用エレベーターであれば、人が乗り降りできる出入口寸法が確保されていれば問題ない場合が多いですが、荷物用エレベーターではそうはいきません。
荷物の大きさ、台車の幅、パレットの寸法、搬送物の高さ、乗場スペース、作業者の動き方などを確認したうえで、扉仕様を検討する必要があります。
特に確認したいのは、次のような点です。
• 荷物が出入口を通れるか
• 台車をまっすぐ押し込めるか
• パレットを搬入しやすいか
• 扉の開閉に必要なスペースがあるか
• エレベーター頂部の高さに余裕があるか
• 昇降路まわりの平面スペースに余裕があるか
• 搬入方向と搬出方向が合っているか
• 作業者が安全に荷扱いできるか
• 扉まわりが破損しにくい仕様か
荷物用エレベーターは、日々の搬送作業に使われる設備です。
そのため、扉仕様は「開けばよい」というものではなく、実際の荷扱いと建物条件に合わせて選ぶことが大切です。


代表的な扉仕様
荷物用エレベーターの扉仕様には、さまざまな種類があります。
一般的な仕様としては、上開き扉、片開き扉、中央開き扉などがあります。
また、出入口の配置として、かごの前後に扉を設ける貫通型や、かごの正面と左右どちらかに扉を設ける直角型などもあります。
代表的なものとしては、次のような扉仕様があります。


扉仕様特徴
上開き扉 ・・扉が上方向に開く仕様。平面上の納まりを抑えやすい場合があります。
片開き扉 ・・扉が左右いずれかの方向に開く仕様。高さを抑えたい場合に検討されることがあります。
中央開き扉・・中央から左右に開く仕様。出入口幅をより早く確保しやすい場合があります。
貫通型  ・・かごの前後に出入口を設ける仕様。搬入と搬出の動線を分けたい場合に有効です。
直角型  ・・かごの正面と左右どちらかに出入口を設ける仕様。建物内の動線に合わせて検討されます。
どの扉仕様が適しているかは、荷物の種類、建物高さ、平面スペース、搬送動線によって異なります。
そのため、標準仕様だけで判断するのではなく、現場の使い方と建物条件に合わせて検討することが重要です。

 

上開き扉の特徴
上開き扉は、扉が上方向に開く仕様です。
荷物用エレベーターで採用されることが多い扉仕様のひとつで、左右方向に扉を引き込むスペースを取りにくい場合や、平面上の納まりを重視したい場合に検討されることがあります。
例えば、昇降路まわりの幅に余裕が少ない場合、片開き扉や中央開きでは扉を納めるためのスペースが取りにくいことがあります。
そのような場合、上開き扉にすることで平面上の納まりが良くなるケースがあります。
一方で、上開き扉は扉が上方向に動くため、エレベーター頂部に必要なスペースが大きくなる場合があります。
建物高さがすでに決まっている場合や、最上階高さに余裕が少ない場合は、上開き扉では納まりが難しくなることもあります。
上開き扉は、荷物用エレベーターらしい仕様のひとつですが、建物高さとの関係を確認したうえで選定することが大切です。


片開き扉の特徴
片開き扉は、左右いずれかの方向に扉が開く仕様です。
横方向に扉を引き込むため、上開き扉と比べてエレベーター頂部の高さを抑えやすい場合があります。
そのため、建物高さが決まっている場合や、最上階高さに余裕が少ない場合には、片開き扉が検討されることがあります。
一方で、片開き扉では扉を納めるための横方向のスペースが必要になります。
昇降路まわりの平面スペースが限られている場合は、片開き扉では納まりにくいこともあります。
片開き扉は、建物高さを抑えたい場合に有効な選択肢になることがあります。
ただし、平面上の納まりも同時に確認する必要があります。


中央開き扉の特徴
中央開き扉は、中央から左右に開く仕様です。
左右に分かれて扉が開くため、出入口幅をより早く確保しやすい場合があります。
荷物の出し入れをスムーズにしたい場合や、台車搬送が多い現場では検討されることがあります。
また、上開き扉と比べてエレベーター頂部の高さを抑えやすい場合があるため、建物高さに制限がある場合にも検討しやすい仕様です。
一方で、中央開き扉も横方向に扉を納めるスペースが必要になります。
そのため、昇降路まわりの幅や扉まわりの納まりを確認することが大切です。
中央開き扉は使いやすい仕様ですが、横方向の納まりと建物条件を合わせて確認することが重要です。


扉仕様は建物高さと平面スペースの両方で考える
荷物用エレベーターの扉仕様を検討する際には、建物高さと平面スペースの両方を確認する必要があります。
例えば、上開き扉にすると、エレベーター頂部に必要なスペースが大きくなることがあります。
そのため、計画している建物高さに対して、エレベーターの頂部が納まらない場合があります。
このような場合は、片開き扉や中央開き扉に変更することで、必要な高さを抑えられる可能性があります。
一方で、平面上のスペースに余裕がない場合は、片開き扉や中央開き扉では扉を納めるスペースが不足することがあります。
そのような場合は、上開き扉にすることで、平面上の納まりが良くなるケースもあります。
つまり、扉仕様は一律に決めるものではなく、建物高さ、昇降路寸法、乗場スペース、搬送動線を見ながら、ケースバイケースで検討する必要があります。
設計段階で早めに扉仕様を確認しておくことで、建物計画との不整合を防ぎやすくなります。


貫通型エレベーターとは?
貫通型エレベーターとは、かごの前後に出入口を設ける仕様です。
通常のエレベーターは、乗り込んだ方向と同じ方向から出ることが多いですが、貫通型では反対側へ通り抜けるように搬送できます。
例えば、1階では前側から荷物を入れ、2階では反対側から荷物を出すような使い方ができます。
貫通型は、搬入と搬出の動線を分けたい現場や、一方通行の搬送動線をつくりたい現場で有効です。

 

直角型エレベーターとは?
直角型エレベーターとは、かごの正面と左右どちらかに出入口を設ける仕様です。
正面から荷物を入れ、右側または左側から出すような使い方ができるため、建物内の通路や作業動線に合わせて検討されることがあります。
例えば、乗場の正面方向に十分なスペースがない場合や、搬送先の通路が横方向にある場合には、直角型が有効になることがあります。
直角型を検討する場合も、貫通型と同じく、エレベーター単体ではなく建物全体の動線を合わせて考えることが大切です。


よくある質問
Q. 荷物用エレベーターの扉仕様はどのように決めますか?
A. 搬送する荷物の寸法、台車やパレットの大きさ、出入口寸法、乗場スペース、建物高さ、昇降路まわりのスペース、搬送動線などを確認して決めます。荷物の出し入れがしやすく、建物条件にも合う仕様を検討することが大切です。


Q. 上開き扉と片開き扉はどちらがよいですか?
A. 現場条件によって異なります。上開き扉は平面上の納まりを抑えやすい場合がありますが、エレベーター頂部に高さが必要になることがあります。片開き扉は高さを抑えやすい場合がありますが、横方向に扉を納めるスペースが必要です。


Q. 建物高さが限られている場合はどうすればよいですか?
A. 上開き扉では必要な高さが大きくなる場合があるため、片開き扉や中央開き扉を検討することで納まりやすくなることがあります。ただし、横方向のスペースも必要になるため、建物条件に合わせて確認が必要です。


Q. 貫通型エレベーターとは何ですか?
A. かごの前後に出入口を設けたエレベーターです。荷物を一方から入れて反対側から出すことができるため、搬送動線を分けたい場合や、台車を方向転換せずに運びたい場合に有効です。


Q. 直角型エレベーターとは何ですか?
A. かごの正面と左右どちらかに出入口を設ける仕様です。建物内の通路配置や搬送動線に合わせて、正面から入り横方向へ出すような使い方ができます。


まとめ
荷物用エレベーターの扉仕様は、搬送物の大きさ、台車やパレットの使用、出入口寸法、乗場スペース、建物高さ、搬送動線によって選ぶことが大切です。
一般的な扉仕様として、上開き扉、片開き扉、中央開き扉があります。
また、かごの前後に扉を設ける貫通型や、かごの正面と左右どちらかに扉を設ける直角型など、出入口の配置によっても使い勝手が変わります。
上開き扉は平面上の納まりを抑えやすい場合がありますが、エレベーター頂部に高さが必要になることがあります。
一方、片開き扉や中央開き扉は高さを抑えやすい場合がありますが、横方向に扉を納めるスペースが必要になります。
このように、扉仕様はケースバイケースで検討する必要があります。
三洋輸送機工業では、荷物用・人荷共用エレベーターを中心に、搬送物の条件、建物条件、作業動線に合わせた仕様検討を行っています。
荷物用エレベーターの扉仕様や出入口寸法でお悩みの際は、まずはお気軽にご相談ください。


執筆者紹介
三洋輸送機工業株式会社 設計担当
荷物用・人荷共用エレベーターを中心に、工場、倉庫、物流施設、既存建物など、さまざまな現場のご相談に対応しています。
搬送物の条件だけでなく、建物条件、扉仕様、出入口寸法、作業動線、保守性まで確認し、安全で使いやすい設備をご提案することを大切にしています。